Middle

英日翻訳者・ライター。行けるとこまで行きます。

リンディ・ウェスト「Shrill: Notes from a Loud Woman」を読んだ

エイディ・ブライアント主演でドラマ化されている原作本「Shrill: Notes from a Loud Woman」を読んだ。この本はコラムニスト、リンディ・ウェストの回顧録で、小さな頃から太っていた彼女が体型コンプレックスを乗り越えて自尊心を獲得するまでの長い道のり、堕胎経験、スタンダップコメディ界の根深い男女差別などを綴っている。先にエイディのドラマのトレーラーを見ていたので、エイディのほんわかした可愛いイメージが先行していたのだけど、本で読むリンディはタイトル通り、かなり舌鋒鋭かった。
本の前半は、太っていることで味ってきた苦労だとか悲しみが、これでもかと続く。「同級生たちは彼氏ができてデートしていても、自分は家に帰って録画したコメディ番組を夢中で見てた」とか、「男の人とレストランに行っても会計で“別々?”ってほぼ毎回聞かれる」とか、「飛行機は誰よりも早く搭乗して、座席は必ず窓際で、フライト中は絶対トイレに行かない」とか。体が大きいぶん、目立たないように、自分を押し殺してきたリンディが、コメディに居場所を見つけたのはすごく自然なことだ。コメディの舞台は、自分が味わってきた苦労だとか悲しみを笑いに変えて、みんなと共有する場所だから。そこでリンディはいろんなコメディアンたちと交流するようになるんだけど、彼らの大半は男性で、女性差別的なネタ、レイプジョークを軽々と口にする。リンディはだんだんとそれに笑えなくなる。「もしわたしがレイプ被害者だったら?」「客席にレイプ被害者がいたら?」
リンディはコラムやTwitterで、レイプジョークに疑問の声を上げる。すると、男性コメディアンやそのファンたちから、それは酷い袋だたきに遭う。彼女の元に寄せられるコメントが、まぁミソジニーに火をつけて全力で投げてきたみたいな、身の危険を感じるほどの炎上っぷりで、これはメンタルやられまくるに決まってる。でも、リンディはそのうちの一人と直接対決する。いったいどんな悪魔なのか。すると、その男は身近にいるようなごく普通の男性で、失恋してやけになっていたのだと謝罪する。おま、それくらいで、え……。
リンディはこの一件ですごく有名になって、ライターとして注目されるようになった。「Shrill」以外に「Thin Skin」という別のドラマの脚本も手がけている。今でもTwitterには憎悪コメントが毎日のように送られてくるけど、それも仕事の一部ともう割り切っているそうだ。体型もキャラクターも型にはまらないリンディが、公私に渡って輝く場所を見つけられたのは、彼女自身が勇気を出して殻を破ったからこそだと思う。わたしは痛い目みずにいい思いしたいと、いつも調子のいいことを願っちゃうんだけど、伝聞で得た言葉に人は共感できないもんね。だから、安全圏から眺めるだけではなく、必要なときには当事者になることを恐れないようにしたいなと、思ったのであった。

9/11(水)
映画ニュース翻訳
リサーチ

9/12(木)
映画ニュース翻訳
J案件

9/13(金)
映画ニュース翻訳
I案件

9/14(土)
映画ニュース翻訳
リサーチ
I案件

9/15(日)
映画ニュース翻訳
リサーチ

Kindle読書「Shrill: Notes from a Loud Woman」リンディ・ウェスト(著)※100%
Amazon「Fleabag フリーバッグ」※シーズン2
試写「アド・アストラ」

 

sayakahonma.hatenablog.com