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英日翻訳者・ライター。行けるとこまで行きます。

「アジズ・アンサリの"今"をブッタ斬り!」

Rawだった。スタンダップを見て泣きそうになったのは初めてだった。去年、セクハラ騒動が報じられたアジズ・アンサリ。デートで食事に出かけ、アジズの家に2人で戻った後にお互いに誤解が生じたらしく、女性はアジズに無理矢理に性行為を強いられたと訴えた。ハーヴェイ・ワインスタインR・ケリービル・コスビーケビン・スペイシーあたりはもう真っ黒に違いない一方で、アジズの場合は記事の詳細を読むとグレーというか、これをセクハラで訴えるのはちょっとアジズが気の毒なのでは?と思ったりした。もちろん、当事者にしかわからない細部があって、それを知ればわたしの印象が変わることもあり得るんだけど。
あれから1年経ち、ステージに戻ってきたアジズは開口一番、まずこの自分の騒動に触れていた。自分がどんな気持ちだったか。どんなに後悔し、反省し、積み上げてきたキャリアを失うかもしれないという恐怖と向き合っていたか。ものすごく正直に心の内をさらけ出して話していたと思う。「コメディショーでいきなりすごい始まり方だろ?」なんて笑いを織り交ぜつつ。
そこから人種差別や性差別について、今と昔では差別の境界線が変わってきていること、いかに簡単に差別する側、搾取する側に回ってしまうか、そんなことをアジズは自身の体験や疑問を教科書にして笑わせながら、観客にも自分は果たしてどうなんだろうと考えるきっかけを与えていたと思う。いつもよりも静かな語り口で観客に問いかけ、客席全体が耳を凝らして、その真実にうなづき笑っていた。
ショーの最後に言う「ありがとう!」というお決まりのセリフ。今まではただ惰性で言ってたけど、今日はステージに帰ってこれた喜びを噛みしめたいと話して、アジズは一拍おいた。一瞬しんとした会場に向かって、「今日は本当に来てくれてありがとう」と言ったとき、「おかえり、アジズ」って心から思った。普段のNetflixスタンダップとは違う、スパイク・ジョーンズのカメラワークや構成もすごくよかったと思う。

7/26(金)
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Netflix「アジズ・アンサリの"今"をブッタ斬り!
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