Middle

英日翻訳者・ライター。行けるとこまで行きます。

エミリー・ビットの小説「The Strays」

ドラマ化されるというニュースを知って、ストーリーが面白そうだったので読み始めたんだけど、展開がスローで途中投げ出しそうになった。
エミリー・ビットの小説「The Strays(原題)」は1930年代のオーストラリア・メルボルンが舞台で、前衛芸術家の夫婦とその娘たち、夫婦を慕う若手アーティストたちによる共同体のボヘミアンな暮らしを、主人公リリーの視点から描いている。リリーは中学生のときに転校したきた学校で魅力的な同級生エヴァと親友になり、自分の家を出てエヴァの両親とその共同体で1年程度暮らすことになる。
大人になったリリーが、共同体で暮らしていたときの生活とそこで起こった事件を振り返る形式で物語が進むんだけど、事件が起こるまでの共同体の雰囲気の描写が長くて「もうわかったから先頼む……」って気持ちになった。エゴイストで自己中心的な両親は、芸術家としては尊敬を集めてるんだけど、親としては育児放棄してるダメ人間で、3人姉妹の1人であるエヴァが、一緒に暮らしている若手アーティストと駆け落ちしてから悲劇が訪れる。この訪れが本の後半で、ここまでが長かった……。
リリーにとって、平凡な自分の両親との毎日よりも、自由奔放な芸術家たちに囲まれた親友の生活の方が輝いて見えるというのはわかる。でも、エヴァの両親はどう考えてもクソで、両親から与えられない愛情を代わりに求めた思春期の初恋が、その後の人生をこんなに惨めにしてしまうなんて、と陰鬱な気持ちになった。何者かになれると信じて結局なれなかった自分を受け入れて生きていく、という大人になってからのリリーとエヴァの姿にはとても共感したのだけど、それもまた哀しい。人生はそこからが本番か。
ドラマは「キリング・イヴ Killing Eve」と「ピクニック・アット・ハンギングロック」のクリエイターが作るみたい。原書をギュッと恐縮して、少女たちの束の間の輝きと大人になった諦観の心境を捉えたビター&ノスタルジックな作品になるのかな。

3/3(火)
映画ニュース翻訳
N案件
リサーチ

3/4(水)
映画ニュース翻訳
N案件
リサーチ

3/5(木)
映画ニュース翻訳

3/6(金)
映画ニュース翻訳

Kindle読書「The Strays」エミリー・ビット(著)※読了