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英日翻訳者・ライター。行けるとこまで行きます。

「トウキョウ・バイス」

ちょうど今週、渋谷や新宿で撮影が行われていたらしい。マイケル・マンパイロット版の監督を務めるというHBO Maxのドラマの原作「トウキョウ・バイス: アメリカ人記者の警察回り体験記」を読み終えて、自分が何の刺激もなくだらーっと暮らしている街で、こんな恐ろしいことが起こっているのかとゾッとする気持ちになった。ニュースを見ていれば、悲惨な事件が日々起こってることはよくわかるんだけど、それでも20代の頃の自分がアホみたいに遊んで泥酔してきた90年代〜2000年代に同時進行でこんな凶悪なことが……って。ストリップクラブで警察と記者が情報交換? そんなことが実際に東京でもあるの!?
この本は読売新聞初の外国人記者として採用されたユダヤアメリカ人ジェイク・エーデルスタインの手記で、彼が埼玉配属の新人記者として仕事を覚えていく様子と、山口組系のヤクザ・後藤組組長が重ねてきた巨悪を暴いていく過程が綴られている。埼玉の愛犬家殺人事件とか、伊丹十三の怪死、読売社内の記者たちの素顔、記者と警察との関係、どれも興味深かったけれど、ジェイクが後藤組の闇に切り込んでいった結果、ある女性に起こった悲劇(文字にできない酷さ)には気分が悪くなるほどショックを受けた。これが映画じゃなくて、東京で今も起こっているかも知れない現実だなんてほんとに衝撃だった。
内容がヤバすぎて/報復が怖すぎて、日本の出版社はどこも手を引いたというこの本は、先にアメリカで英語で出版された。その後ジェイク本人が日本語にして、誤植を多々含んだそのまま世に出したところに、中身の生々しさが感じられる。彼がこうして完結させたのは正義感と義務感と多少エゴもあったんだと思うけど、亡くなった命は1人だけじゃなくて、犠牲も大きかったなと思う。

12/8(火)
映画ニュース翻訳;リサーチ;N案件
12/9(水)
映画ニュース翻訳;リサーチ;N案件;J案件
12/10(木)
映画ニュース翻訳
12/11(金)
映画ニュース翻訳;リサーチ

Kindle読書「トウキョウ・バイス: アメリカ人記者の警察回り体験記」ジェイク・エーデルスタイン(著)※読了